2026年東北大文系数学|ベクトル方程式と円の方程式を使った解法
2026年9月11日



東北大学 数学入試の過去問解説:2026年度前期文系第3問
東北大学の数学は、良質な問題が多く、特にAO入試においては過去問が公式HPに掲載されるものの、詳細な解答資料が少ないのが現状です。この解説では、東北大学を目指す受験生の皆様に向けて、2026年度前期文系第3問の解答と、問題のポイント、そして大学側の出題意図を深く掘り下げていきます。
東北大学 数学入試の特徴と対策
東北大学の数学入試は、文系・理系ともに記述式が中心です。微分積分、確率、数列(漸化式)、図形と方程式が頻出分野であり、単純な公式暗記だけでは解けない思考力を問う問題が多く出題されます。また、誘導形式の設問が多く、(1)(2)(3)と段階的に難易度が上がる構成が特徴です。
対策としては、過去問演習を通じて出題パターンを把握し、記述の丁寧さ(部分点を狙う書き方)を意識することが重要です。特に、誘導に乗る練習として、(1)の結果を(2)で使う意識を持つことが求められます。
2026年度前期文系第3問:平面上のベクトル問題
この問題は、平面上の三角形OABにおけるベクトルに関するもので、ベクトルの内積、分点の位置ベクトル、直交条件、そして図形の方程式を組み合わせた総合的な問題です。1次独立の定番問題でありながら、文字が多く計算が複雑になるため、丁寧な計算力と論理的思考力が試されます。
問題概要
平面上の三角形OABにおいて、$\vec{a} = \vec{OA}$、$\vec{b} = \vec{OB}$とし、以下の条件が与えられています。 $|\vec{a}| = \sqrt{2}$、$|\vec{b}| = \sqrt{5}$、$\vec{a} \cdot \vec{b} = 1$
$s, t$は$0 < s < 1, 0 < t < 1$を満たす実数とし、辺OAを$s:(1-s)$に内分する点をD、辺OBを$t:(1-t)$に内分する点をEとします。線分AEと線分BDの交点をFとし、これら2つの線分は点Fにおいて直交しているとします。
(1) $t$を$s$を用いて表し、また、$s$のとりうる値の範囲を求めよ。
この設問では、まず点Dと点Eの位置ベクトルを$\vec{a}, \vec{b}$を用いて表します。 $\vec{OD} = s\vec{a}$ $\vec{OE} = t\vec{b}$
次に、点Fが線分AEと線分BDの交点であることから、$\vec{OF}$を2通りの方法で表し、係数比較を行います。 $\vec{OF} = (1-k)\vec{OA} + k\vec{OE} = (1-k)\vec{a} + kt\vec{b}$ $\vec{OF} = (1-l)\vec{OB} + l\vec{OD} = (1-l)\vec{b} + ls\vec{a}$
$\vec{a}$と$\vec{b}$は1次独立であるため、係数を比較して連立方程式を解きます。 $1-k = ls$ $kt = 1-l$
さらに、線分AEと線分BDが点Fで直交するという条件、すなわち$\vec{AE} \cdot \vec{BD} = 0$を利用します。 $\vec{AE} = \vec{OE} - \vec{OA} = t\vec{b} - \vec{a}$ $\vec{BD} = \vec{OD} - \vec{OB} = s\vec{a} - \vec{b}$
$(t\vec{b} - \vec{a}) \cdot (s\vec{a} - \vec{b}) = 0$ $st(\vec{a} \cdot \vec{b}) - t|\vec{b}|^2 - s|\vec{a}|^2 + (\vec{a} \cdot \vec{b}) = 0$ 与えられた$|\vec{a}| = \sqrt{2}$、$|\vec{b}| = \sqrt{5}$、$\vec{a} \cdot \vec{b} = 1$を代入すると、 $st - 5t - 2s + 1 = 0$ これを$t$について整理すると、$t(s-5) = 2s-1$ $s \neq 5$なので、$t = \frac{2s-1}{s-5}$
$0 < t < 1$の条件から、$0 < \frac{2s-1}{s-5} < 1$を解きます。 $s-5 < 0$であるため、$s-5$をかけると不等号の向きが逆転します。 $0 < 2s-1$より、$s > \frac{1}{2}$ $2s-1 < s-5$より、$s < -4$ これと$0 < s < 1$を合わせると、$s$のとりうる値の範囲は$\frac{1}{2} < s < 1$となります。
(2) $\vec{OF}$を$\vec{a}$および$\vec{b}$を用いて表せ。
(1)で得られた$t = \frac{2s-1}{s-5}$と、連立方程式$1-k = ls$, $kt = 1-l$を利用して、$k$または$l$を$s$で表します。 $k = \frac{s-4}{s-5}$ これを$\vec{OF} = (1-k)\vec{a} + kt\vec{b}$に代入すると、 $\vec{OF} = (1 - \frac{s-4}{s-5})\vec{a} + \frac{s-4}{s-5} \cdot \frac{2s-1}{s-5}\vec{b}$ $\vec{OF} = \frac{1}{s-5}\vec{a} + \frac{(s-4)(2s-1)}{(s-5)^2}\vec{b}$ この解答例では、$\vec{OF} = \frac{s+4}{2s^2-3s+1}\vec{a} + \frac{2s^2-3s+1}{2s^2-3s+1}\vec{b}$という形に整理されています。
(3) 平面上の点Pで$|\vec{OP}|^2 + 2\vec{FP} \cdot \vec{AB} = 4$を満たすもの全体が半径3の円をなすための必要十分条件を$\vec{OF}, \vec{a}, \vec{b}$を用いて表せ。また、この必要十分条件が成り立つとき、$s$の値を求めよ。
この設問は、ベクトルの知識に加え、円の方程式に関する理解が求められます。 与えられた式$|\vec{OP}|^2 + 2\vec{FP} \cdot \vec{AB} = 4$を変形します。 $\vec{FP} = \vec{OP} - \vec{OF}$ $\vec{AB} = \vec{OB} - \vec{OA} = \vec{b} - \vec{a}$
$|\vec{OP}|^2 + 2(\vec{OP} - \vec{OF}) \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 4$ $|\vec{OP}|^2 + 2\vec{OP} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) - 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 4$
ここで、$\vec{OP}$について平方完成を行います。 $|\vec{OP} + (\vec{b} - \vec{a})|^2 - |\vec{b} - \vec{a}|^2 - 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 4$ $|\vec{OP} + (\vec{b} - \vec{a})|^2 = |\vec{b} - \vec{a}|^2 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) + 4$
ここで、$\vec{C} = -(\vec{b} - \vec{a}) = \vec{a} - \vec{b}$とおくと、 $|\vec{OP} - \vec{C}|^2 = |\vec{b} - \vec{a}|^2 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) + 4$
点P全体が中心$\vec{C}$、半径$R$の円をなすとき、$R^2 = |\vec{b} - \vec{a}|^2 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) + 4$となります。 問題文より、この円の半径は3であるため、$R^2 = 3^2 = 9$です。 よって、必要十分条件は $|\vec{b} - \vec{a}|^2 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) + 4 = 9$ $|\vec{b} - \vec{a}|^2 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 5$
ここで、$|\vec{b} - \vec{a}|^2 = |\vec{b}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{b} + |\vec{a}|^2 = 5 - 2(1) + 2 = 5$ これを代入すると、 $5 + 2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 5$ $2\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$ $\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$
これが求める必要十分条件です。 次に、$s$の値を求めます。(2)で求めた$\vec{OF}$の式を代入します。 $\left( \frac{s+4}{2s^2-3s+1}\vec{a} + \frac{2s^2-3s+1}{2s^2-3s+1}\vec{b} \right) \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$ $\left( \frac{s+4}{2s^2-3s+1}\vec{a} + \frac{2s^2-3s+1}{2s^2-3s+1}\vec{b} \right) \cdot \vec{b} - \left( \frac{s+4}{2s^2-3s+1}\vec{a} + \frac{2s^2-3s+1}{2s^2-3s+1}\vec{b} \right) \cdot \vec{a} = 0$ 分母を払って整理すると、 $(s+4)\vec{a} \cdot \vec{b} + (2s^2-3s+1)|\vec{b}|^2 - (s+4)|\vec{a}|^2 - (2s^2-3s+1)\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ $(s+4)(1) + (2s^2-3s+1)(5) - (s+4)(2) - (2s^2-3s+1)(1) = 0$ $s+4 + 10s^2-15s+5 - 2s-8 - 2s^2+3s-1 = 0$ $8s^2 - 13s = 0$ $s(8s-13) = 0$ $s=0$または$s=\frac{13}{8}$
しかし、(1)で求めた$s$の範囲は$\frac{1}{2} < s < 1$です。 この範囲に当てはまる$s$の値は存在しません。 解答例では$9s^2 - 16s + 4 = 0$という式が出ており、$(7s-2)(s-2)=0$と因数分解されていますが、これは計算ミスか、途中の式変形が異なる可能性があります。 解答例の最終結果は$s = \frac{2}{7}$となっていますが、これは$\frac{1}{2} < s < 1$の範囲外です。
再計算と確認 $\vec{OF} = \frac{(s+4)\vec{a} + (2s^2-3s+1)\vec{b}}{2s^2-3s+1}$ $\vec{OF} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$ $\frac{1}{2s^2-3s+1} \left( ((s+4)\vec{a} + (2s^2-3s+1)\vec{b}) \cdot (\vec{b} - \vec{a}) \right) = 0$ 分子が0になればよい。 $(s+4)\vec{a} \cdot \vec{b} - (s+4)|\vec{a}|^2 + (2s^2-3s+1)|\vec{b}|^2 - (2s^2-3s+1)\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ $(s+4)(1) - (s+4)(2) + (2s^2-3s+1)(5) - (2s^2-3s+1)(1) = 0$ $s+4 - 2s-8 + 10s^2-15s+5 - 2s^2+3s-1 = 0$ $8s^2 - 13s = 0$ $s(8s-13) = 0$ $s=0$または$s=\frac{13}{8}$
やはりこの結果となります。解答例の$9s^2 - 16s + 4 = 0$に至る過程に何らかの誤りがあるか、あるいは$\vec{OF}$の表現が異なる可能性があります。 解答例の$\vec{OF} = \frac{s+4}{2s^2-3s+1}\vec{a} + \frac{2s^2-3s+1}{2s^2-3s+1}\vec{b}$という式は、(2)の私の導出と異なっています。 (2)の私の導出は$\vec{OF} = \frac{1}{s-5}\vec{a} + \frac{(s-4)(2s-1)}{(s-5)^2}\vec{b}$でした。 この式で計算してみます。 $\left( \frac{1}{s-5}\vec{a} + \frac{(s-4)(2s-1)}{(s-5)^2}\vec{b} \right) \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$ $\frac{1}{s-5}\vec{a} \cdot \vec{b} - \frac{1}{s-5}|\vec{a}|^2 + \frac{(s-4)(2s-1)}{(s-5)^2}|\vec{b}|^2 - \frac{(s-4)(2s-1)}{(s-5)^2}\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ 両辺に$(s-5)^2$を掛けて、 $(s-5)\vec{a} \cdot \vec{b} - (s-5)|\vec{a}|^2 + (s-4)(2s-1)|\vec{b}|^2 - (s-4)(2s-1)\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ $(s-5)(1) - (s-5)(2) + (s-4)(2s-1)(5) - (s-4)(2s-1)(1) = 0$ $s-5 - 2s+10 + 5(2s^2-9s+4) - (2s^2-9s+4) = 0$ $-s+5 + 10s^2-45s+20 - 2s^2+9s-4 = 0$ $8s^2 - 37s + 21 = 0$ $(8s-21)(s-1) = 0$ $s=1$または$s=\frac{21}{8}$ $s=1$は$0 < s < 1$の範囲に含まれないため不適。$s=\frac{21}{8}$も範囲外。
解答例の計算過程を再度確認すると、$\vec{OF} = \frac{(s+4)\vec{a} + (2s^2-3s+1)\vec{b}}{2s^2-3s+1}$の分母が$2s^2-3s+1 = (2s-1)(s-1)$となっています。 この式は、(1)で導出した$t = \frac{2s-1}{s-5}$の分母$s-5$とは異なり、また$s$の範囲$\frac{1}{2} < s < 1$を考えると$2s-1 > 0$、$s-1 < 0$なので分母は負になります。 解答例の$\vec{OF}$の式は、私の導出とは異なる経路で得られたものと思われます。 解答例の$9s^2 - 16s + 4 = 0$から$s = \frac{2}{7}$という結果は、$\frac{1}{2} < s < 1$の範囲外であるため、この問題の解としては不適となります。
この問題は、ベクトルの基本を忠実に適用し、計算を正確に行うことが何よりも重要です。特に、文字が多く複雑な計算になるため、途中でミスをしないよう慎重に進める必要があります。東北大学の数学では、このような丁寧な計算力と論理展開が求められることを示唆しています。